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政治・経済・社会について考えを綴る、とある東大生の雑感ブログ。

基礎研究と研究費削減 ~ノーベル賞に寄せて~

お久しぶりです。

先日東工大大隅良典榮譽教授がノーベル生理学・医学賞を受賞しましたね。

www.titech.ac.jp

その記者会見で話題となったのが、「研究費の削減と応用科学偏重により、科学技術の根幹を支える基礎研究の質の低下が危ぶまれる」というものでした。

発光ダイオードの研究でノーベル物理学賞を受賞した天野教授なども同じコメントをしていたと報じられました。

 

科学分野のノーベル賞は一般的に数十年前の研究の成果が社会に実装されるなどして認められることで受賞します。山中教授のiPS細胞研究は例外でした。

特に今回のような基礎研究は生きているうちに貰えるかわからない分野です。

 

ここ最近はほぼ毎年日本人が受賞している感じで、「やっぱ日本は科学技術大国だ!」などと安心する向きも見られます。

 

しかし今現在の研究が根の細い、短期的成果を求めるものに偏重しているとしたら、将来の発展は危ぶまれます。

競争的資金獲得制度などにより、成果を確実に説明できる研究に資金が偏って流れるようになっている可能性は否定できません。

 

内閣府の発表した「第5期科学技術基本計画(平成28~平成32年度)」

http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5gaiyo.pdf

をよく見ると、基盤的な力の強化策に触れている割合は極めて少なく、

しかもその内容は大学運営の効率化(という名の補助金削減)や女性の活躍推進という的を外れた議論など、疑問が残るものが目立ちます。(若手のポストやキャリアパスを作ろうという政策はいいと思いますが)

 

国民の税金を投入する以上役に立つといえるものにしかお金を出せないということなのでしょうか。

それでも何年か前までは基礎研究やビッグ・サイエンスの重要性を意識した議論が進んでいたようです。

最後のはおまけです。この時期は活発に議論が交わされていたということですね。

 

 

ところで実際の所研究費はどのように推移しているのでしょうか。

総務省統計局をのぞいてみましょう。

 

これを見ると意外にも研究資金は増加傾向にあったりします。

内訳をみると大学の研究費は変わらず、企業の研究開発費が増加しているようです。

 

そして驚いたのは2番目の資料の42ページ。

理工系の一人当たりの研究費が、人文系を上回る減少を見せているのです。

38ページの基礎研究費を見る限りでは大騒ぎするほどではなさそうですが、研究者の身分保障についても考える必要があると言えるでしょう。

 

ただ、そもそも全体の金額がこれで足りているのかという点について議論しなければなりません。

詳しくは分かりませんが、

国立大学の法人化で国から大学への資金援助はかなり抑えられるようになっているのではないかと思います。

1番目の資料では諸外国と比べても高水準の研究費・研究者数だと豪語しているのですが、どれもトップになれていないし不十分な気がします。

 

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とりあえず、財政改革の旗を振って真っ先に科学技術予算を削減するのはやめてほしいですね。

あと人文科学にもちゃんとお金出さないとだめです。

今回は自然科学メインで書きましたが、大学を国全体で支えてほしいというのが本音です。

 

2016.11.10 追記

衆議院議員河野太郎氏が基礎研究費の削減について実態を調査しているという情報が入って来ました。

http://www.taro.org/2016/11/研究者の皆様へ.php

やはり本当は減っていないのでしょうか?興味深いですね。