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政治・経済・社会について考えを綴る、とある東大生の雑感ブログ。

緊急特集:トランプ大統領誕生後の世界を考える

長文注意

 

日本時間11月9日、米国大統領選挙が決着しました。

結果は大方のメディアの予想を覆すドナルド・トランプ氏の勝利。

株価が乱高下したりカナダの移民サイトがダウンしたりと各地で大騒ぎの事態になっています。

www.politico.com

Brexit(英国のEU離脱)の時同様にメディアの楽観的観測が強かったので、もしかしてトランプが勝つかなとは思いましたが本当になりました。

www.msn.com

米国民の少なくとも半数が、政治経験の豊富なクリントン氏に明確なNOを突き付けたということでしょう。米国で何が起こっているのか理解するためにもっと勉強します。

トランプ氏の支持基盤は中高年・白人・男性・中間層と言われ、自分たちの職や所得が移民に奪われているという主張やエスタブリッシュメント(既成勢力)に都合のよい政治が展開されているなどといった考えが特徴的です。

こうした層が政治に大きな揺れを引き起こす動きは先進欧米諸国で徐々に広がりつつあり、今後の世界の動きが注目されます。

 

ところで、選挙中は暴言や実現可能性に乏しい政策など大統領としての資質を疑われていたトランプ氏ですが、実際に大統領に就任したあとの世界秩序はどうなるのでしょうか。

注目する点は

  1. 経済情勢の変化(特にグローバリゼーションの行方)
  2. 世界のパワーバランスの変化(中国とロシア、欧州)
  3. 文化的寛容性の低下
  4. 日本の歩むべき道(方針転換のチャンス)

です。(1が長くなってしまったので、面倒に思ったら2からどうぞ)

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まず経済的な影響ですが、金融市場の動乱は一時的なものであって次第に実体経済に見合った水準に収斂していくだろうと考え、特に触れません。

ここで考えたいのは米国が保護主義的スタンスを取ることによる影響です。

米国はここしばらくの間、自由貿易の旗振り役でありグローバリゼーションの中心にいました。

国境の垣根が低くなりヒト・モノ・カネの動きが激しくなるほどアメリカに利益がもたらされる仕組みになっていたといっても過言ではないでしょう。(やや印象論ですが)

私はグローバリゼーションは資本主義の究極形だと考えています。資本主義は原理的に誰かから正味搾取していくことで豊かになる性質があります。海外の市場をどんどん開放していけば先進国が豊かになるのです。

しかしグローバリゼーションの恩恵を受けているのは国民全体ではなかったようです。実際はどうやら資本家や投資家、企業の上層部に富が集中していたらしい

日本でも賃金労働者への還元が少ないから経済が回らないという話がたまに聞かれます。

話を戻すと、今回のトランプ大統領誕生を機にグローバリゼーションの批判的検証が始まるのではないでしょうか。(始まってほしいという面もあります)

IMFのデータを見ましたが、2000年代前半は確かに世界経済が好調であったもののリーマンショック以降パッとしない上、格差の拡大と貧困問題が露呈しています。

経済の専門家の予測は「米国の保護主義化による世界の貿易の減少、米国の雇用減」などとなっていますが、グローバリゼーションにブレーキがかかれば相殺効果があるかもしれません。

ただ、米国だけが取り残されるという可能性もあります。

www.msn.com

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次にパワーバランスの変化についてです。

トランプ氏の外交手腕は未知数ですが、ビジネスマンとして磨き上げた交渉力はかなりのもののようです。それを生かして案外したたかな(米国に利益をもたらす)外交成果を上げると考えています。

ただしそれは普通の国の話です。徐々に世界の大国として頭角を現しつつある中国と、用意周到な戦略を粛々と進めるロシア(のプーチン大統領)を侮ってはいけません。

彼らはかなりの長期的展望に基づいて今の外交を展開してきます。

いくらビジネスマンとして実績があれ、政治経験のないトランプが一枚下手に回ってしまうのではないかと危惧しています。しかも米国以外を守ることに消極的ですからね。

しばらくの間は日本の周辺で、中国の力が強まることでしょう。あとは側近次第です。

ロシアはシリアなどほかの地域で徐々にアメリカを駆逐していくかもしれません。

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さて3つ目に容易に予想されることですが、トランプ政権下では人種問題やLGBT、女性の権利などにおいてアメリカの文化的水準の下落が起こるでしょう。

それはトランプ氏のせいではなく、トランプ氏の支持者がそういう主義の人たちだからです。

あるいはそこまでいかなくても、米国内で議論が真っ二つに割れる事態は避けられません。

いわゆるマイノリティの方にとってはしばらく暗黒の時代が続くことを覚悟しなければならないでしょう。

怖いのはこの動きが米国外に広がることですね。もともと差別的な感情は常に芽があるので飛び火すると大変なことになります。

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なんだか長くなってしまいましたが、最後にトランプ時代に日本が取るべき道について考えておきます。

まずTPPを成長戦略の主軸に据えていたアベノミクスの見直し

TPPで海外の販路を拡大すれば自動的に日本のGDPも上向くだろうという考えは少々甘いでしょう。

日本経済が上向かないのは何といってもイノベーションの不足です。新しい製品を生み出す力が圧倒的に落ちてしまった。

その根幹にはいろいろな問題があり、ここでは議論しつくせません。

ただこれを機に地に足を付けた(金融・財政政策に頼らない)経済政策を推進すべきでしょう。

それからアメリカからアジアに経済の軸足を移してはどうでしょうか。

東アジアはこれからの経済成長のフロンティアです。こちらで一大経済圏の構築を目指しておくのも長期的にはいいでしょう。

政治的にも、中国大国時代の対中関係構築に努める好機です。いつまでも日米同盟が世界の基軸であるという幻想からは抜け出すべき時代に来ています。

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トランプ氏がどのような政策を展開するのか、非常にワクワクしています

日銀の大規模金融緩和に続く、国の未来を賭けた大きな実験です。

このような興味深い時代に生きることができて嬉しいですね。