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政治・経済・社会について考えを綴る、とある東大生の雑感ブログ。

サービス業界の「過剰品質」

今に始まったことではありませんが、サービス業界における長時間労働の苦しさが少々話題に上っております。

toyokeizai.net

AERAの記事はある程度割り引いて読むことにしているのですが、この話はTwitterでも生の声として時々耳にするので一考には値するでしょう。

 

問題になっているのは

  • 24時間営業
  • 注文から1時間で配達
  • 配達時間指定の要求の厳しさ
  • 年末年始であろうと休めない

といった現場の厳しい労働環境。

24時間営業や年末年始営業はかなり前からやっていると思いますが、宅配に関する問題は近年のネット通販等の急な拡大によって問題が顕在化している面があります。

 

こうした海外では考えられないような「高水準の」サービスを提供しているのは需要があり、そこに市場があるからです。

しかしこれは世界に誇れる「高水準」ではとてもありません。

 

ネット上では「1時間で届かないと困るなんてその人の時間管理能力が悪いだけ」などと切り捨てる向きもありますが、

それを利用する人も長時間労働の影響で前もって色々やっておく余裕がないのかもしれませんし、事は単純ではありません。

 

「消費者がそのサービス業で働く人の生活を思いやれば解決する」という意見もあり、確かにそうした心構えが私たちに足りていない部分はあるでしょう。とはいえそうした道徳的論理だけでは問題解決に至らないと思います。

 

社会の悪循環とも見て取れるのでどこから正せば良いのか非常に難しいですが、先に一つ指摘しておきたいことがあります。

 

 

歯止めの効かなくなった資本主義の論理が社会に幅を利かせている。

 

効率や利益を追い求めていくうちに、自らの生活を犠牲にしてまで「他者に貢献」することが美徳とされ、ますます心と体を蝕んでいく。

今あちこちで「資本主義の危機」が叫ばれ始めていますが、私たちも何か大切なことを置き去りにしてきてしまったような気がします。

 

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さて、本題に戻って解決の糸口は何でしょうか。

こういう時は、企業の意思決定に最も影響する「コストに見合った利益が得られるか」に注目するのが効果的でしょう。

 

24時間営業がむしろ経営の重荷になっていると判断すれば深夜営業は取りやめるだろうし、ドライバーの賃金の方が1時間配送によって得られる販売機会よりも高いならそうしたサービスはやめるでしょう。

 

その方向に社会を向かわせるにはどうしたらよいか。

一つは我々は本当に必要でない限り安易にこうしたサービスを利用しないこと。つまり一種のボイコット。

もう一つは賃金の大幅な上昇。まあこれは企業が決めるので難しいところではありますが、最低賃金の上昇は多少影響するんでしょうか。

 

最低賃金は経済学的には賛否が分かれるところで、中小の事業者も反対することが多いのですが、

一方で経済が好循環すればいずれ恩恵を受ける可能性もあるわけで、彼らを納得させられるような経済状況を作り出すための経済政策を打ち出さなくてはなりません。

 

じゃあそんな経済対策って何だろう、という話はまたの機会にしましょう。