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政治・経済・社会について考えを綴る、とある東大生の雑感ブログ。

衆院選特集:選挙制度改革のススメ

どんな選挙だったか

2017年10月22日、衆議院議員総選挙の投票が行われました。

 

通常国会閉会後、徐々に安倍政権の支持率が持ち直し、民進党の混乱を見極めた首相が踏み切った突然の解散。

消費税の使途変更(財政再建先送り)と北朝鮮の脅威を「国難」などと訴え、憲法改正にも言及して選挙戦を展開しました。

 

その後小池都知事を代表とする希望の党が急設され、民進党は前原代表の一存で全面合流を画策。

 希望の党が追い風を受け一時は自民党の苦戦が予想されたものの、「排除の論理」発言をきっかけに希望の党は失速。

(都政を疎かにして都民の反感を買ったことや、掲げた政策が旧民主党を彷彿とさせるものだったという面もあります)

(そもそも希望の党は政策的に自民党と似通っていて、政権交代が仮に実現したところであまり変化が無いだろうなとは思っていました。)

 

市民の後押しを受けた枝野氏が立憲民主党を創設し、希望の党に賛同しなかった民進党議員を中心に一定の受け皿を確保しました。

 

こうして政権批判票は分散し、結果的に与党が解散前とほぼ同じ勢力を確保しました。

野党再編以外に何の意味も為さなかった選挙として歴史に残りそうですね。

 

結果は以下の通りです。

自由民主党284、立憲民主党55、希望の党50、公明党29、共産党12、維新の会11、社民党2、無所属22

 

選挙制度の見直しを

現在の衆議院議員総選挙小選挙区比例代表並立制です。およそ4分の3の議席小選挙区制で選出されます。

 

この小選挙区制は20世紀末、日本に二大政党制を根付かせることを狙いのひとつとして導入されたものです。

 

その原理上「与党vs乱立する野党」の構図では、仮に政権支持率が半分であっても政権批判票は分散し、与党を利する傾向を持ちます。

実際、大手紙各社の世論調査によると、現在の安倍政権の支持・不支持は概ね拮抗していますが、選挙結果を見ると圧勝と言えますね。

 

つまり小選挙区制は、過半数の支持がありさえすればその支持を拡大して議席に反映する仕組みなのです。

 

ところで、選挙が終わるとメディアはよく「野党共闘が実現すればこれだけ議席を確保できたはずだ」と言い、

それに対し「負け惜しみだ。選挙の結果こそが民意の反映である」と批判する人たちがいますよね。

野党共闘が実現したところで過半数は取れていないので負け惜しみなのは事実ですが、一方で小選挙区制は原理的に民意の正確な反映はしません。

 

それ以前に、これらの発言は「多党制が根付いたまま小選挙区制を続けている日本の選挙」が抱える問題を見逃していると思います。

 

自民党が政権与党であり続ける安定した政治を望むのなら、今の制度は素晴らしいでしょう。

かつての民主党の失敗もあり、また野党も乱立していますから、小選挙区制下での自民党有利は当面続きそうです。(よほどの失策がなければ)

 

しかし包括政党的な面も持つ自民党とはいえ、完全ではありません。

この安定した経済の中でさえ、日々の生活に苦しむ人がいます。その人たちの声は、今回の選挙結果に反映されているのでしょうか。

 

反映されていない声があるなら、自民党の政策決定過程が変わるか選挙制度が変わるか。私としては選挙制度が変わる方が健全な政治だと思います。

 

今後の選挙制度と政党の在り方

我々はいま、20年前の政治改革以来の政治を振り返り、今後の日本の政治を真剣に考えるべき時に来ています。

間接民主制を前提とするなら、基本的には次の2つの選択肢のどちらかです。

 

  1. 自民党の分裂も含め徹底的に二大政党に再編して小選挙区制を続け、政権交代を当たり前にする
  2. 多様な党の存在を前提に比例代表制を主軸にする制度に再設計する(参議院非拘束名簿式比例代表制など)

現在のような中途半端が一番悪いです。

 

これらは端的に言えば、「その時々によりバランスの取れる安定した政治」「常に民意を正確に反映する政治」のどちらを国民は望むのか、ということでもあります。

 

しかしこの20年余にわたる二大政党制の実験は失敗に終わりました。どうやらわが国には二大政党制はそぐわないようです。

日本には多様な党の存在を前提にした選挙制度の構築が必要ではないでしょうか。

 

特集1はこれで終わります。ありがとうございました。

 

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2017.10.30追記

衆院選後初のNNN世論調査結果が発表。

(読売新聞系という特性を加味した上での議論です)

http://www.news24.jp/articles/2017/10/29/04376553.html

ということが分かります。

 

大体の国民は「非安倍・自民党政権・監視野党」の政治構図が良いと考えているようです。