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政治・経済・社会について考えを綴る、とある東大生の雑感ブログ。

揺れる東芝:経産省の影と再編シナリオ

(長い間記事更新ができずご心配をお掛けしました。やっと忙しい時期が終わったので再び書いて行こうと思います。)

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ーー東芝自体はうまくいっているが、原子力という癌に侵されてしまったーー

 

この一か月間、記事を書く暇が無いながらも東芝の混迷の全貌を把握しようと努めてきました。

(ちなみに2月4日付の週刊東洋経済が大変詳しくまとめているので、是非ご一読を)

 

2年前の粉飾決算に始まった東芝の経営危機。不採算の海外事業からの撤退など数々の改革を進め、一時は株価も元の水準に回復していました。

 

昨年度末はWH(米ウェスチングハウス)で生じた2400億円規模の損失の穴埋めのため、優良子会社の東芝メディカルシステムズキヤノンに売却し、これで事態は収束したものだと思っていました。

 

ところが2016年12月末、原子力事業で最大7000億円規模の桁違いの損失が出るかもしれないという発表があり、今年度末決算で債務超過に陥る瀬戸際に立たされています。

 

この辺りの一連の経緯は様々な特集記事で良くまとまっていますので、あえてここで書き直すことは控えておきます。

 

さて、調べていく中で分かった重要なポイントは以下の通りです。

  • WHは東芝が2006年に市場価値の2倍の約6000億円で買収
  • 東芝とは異なるタイプの原子炉製造技術を手に、世界進出を図った
  • 当初から数十基の受注という野心的すぎる目標を掲げていた
  • WHに対して東芝はそれほどコントロールを利かせられていない様子
  • 元々WHの原子力部門は英国の原子力会社に買われた後、身売りに出されたもの
  • 当時米国ではすでに原子力事業は採算が取れなくなっていた
  • 福島の事故をきっかけに規制が更に強化され、コストが激増かつ不透明に
  • 日本での事業だけが儲かる構造になっている(電力会社が電気代に転嫁)
  • インドや中国で原発建設が盛んと言われるが、実態は低調
  • 今回の巨額損失も、米国で建設中のプロジェクトのコストが増え続けているせい

 

更にまとめると、

「世界的にはビジネスとして成り立たなくなっていた原子力事業を、経産省の旗振りの下で、儲かる幻想の下に続けてきてしまった」

という感じです。

 

ニュースを追っていく中で「東芝の経営陣ともあろう頭のいい人たちなら、原子力事業の切り離し最適な解決策だと分かるだろう」と考えていましたが、なかなかその話が出てきませんでした。

 

メディカルを売ってしまった今、大きな稼ぎ頭となるのはメモリー事業くらいです。実際、今の東芝の利益の大半を稼ぎ出しています。これを分社化して株の一部を売却しようというシナリオが現実味を帯びてきました。

 

なぜメモリーを売ってまで原子力を守らなければならないのか。ここに原子力事業が抱える一つの問題があるようです。

 

それは「国策民営」の構造。

 

安倍政権が原発の輸出を成長戦略に掲げていることからも分かるように、原子力は民間企業である東芝の完全自由な経営戦略では動けないのです。

WHを買収した時にどの程度日米間の政治的利害が絡んでいたかは知る由もありませんが、撤退の時だと思ったときに身動きがとりづらいのは確かです。

 

 

インフラや半導体において屈指の技術を持つ東芝。また子会社には東芝テックなどの優良企業もまだ残っています。これらをバラバラにしてまで原子力事業を守ることに意味は全くありません。

 

東芝はこの前、「原発の建設事業からは手を引き、保守・メンテナンス等に専念したい」という意向を見せました。少なくとも利益率の極めて低い建設事業からは撤退すべきだと、当の東芝は分かっているのです。

 

東芝を救うにはどうしたらいいのでしょうか。期限が3月末という制限の為にひどく難しい局面を迎えていますが、一番いいのは国内メーカーの原子力事業再編を国主導で進めることでしょう。

 

この期に及んで政府はおそらく原発輸出を日本の成長エンジンにしたいと思っているでしょうから、それを逆手に取ればよい。

 

つまり「日本の原子力事業をより競争力のあるものにする」という大義名分の下、日立・三菱重工東芝原子力事業を統合して政府出資の新会社を発足させるのです。

 

実現には困難が伴います。東芝債務超過を防ぐには間に合わないかもしれないし、他のメーカーが賛成するかは分からない。

何ならとりあえず東芝の分だけでも買ってくれないかなあと思ったり。

 

そうすれば損失を抱える原子力事業から売却益を得ることになり、非常に合理的な再建を実現することができるかもしれません。

 

今日は長くなったのでここまでにします。