北方領土は還らない、それでも
15日、山口県長門市で安倍首相とプーチン大統領が会談を行い、北方領土における共同経済活動に向けた交渉入りなどで合意しました。
今回の成果は北方領土問題の大きな進展と言えると共に、はっきり言ってこれ以上日本の利益を引き出すことは困難でしょう。
多くの国民が北方領土は粘り強く交渉すればいつか返してもらえるという根拠の無い淡い期待を抱いていますが、無理だと思います。
何故でしょうか?
相手国の立場に立つことと、北方領土の歴史から少し考えてみましょう。
まず、北方領土の歴史で現在に一番影響があるのは終戦前後の経緯です。
日ソ中立条約を破ってソ連が千島列島を占領して行き色丹島に至りました。
条約違反だから無効だ、という批判も一理ありますが、
日本が敗戦国であることやそもそも戦時の条約であることから、戦前の領有権を根拠に返還を求めることには厳しい面があります。
それから、ロシアの立場で北方領土を眺めればわざわざ日本に易々と領土を譲ることなどしたい筈がありません。
日本だってそうでしょう。どんな経済的見返りがあったとしても、尖閣諸島を譲りますか?
中国の軍事的脅威が近づくことや漁業権を考えればそんな事はしたくないでしょう。
だから、日本の領土として返還されることを期待するのは単なる独りよがりの願望に過ぎません。
「それでも」、北方領土に付随する一切の利益を手に入れることを諦めるのは時期尚早です。
あの一帯は豊かな漁場であり、ロシアの領海になって漁獲出来なくなるのは大いなる損です。
また北方領土問題のせいで日露の経済交流が進まないのも潜在的な不利益でしょう。
ロシアと近づき過ぎるとパイプラインを止められる欧州みたいな状況に陥りかねませんが、もう少し接近できる余地はありそうです。
領土としてはロシアの主権が及んでいることを薄々認めつつ、北方領土を通じて日露の交流を深めお互いの経済的利益を実現する。その一歩としての今回の会談は非常に評価出来るものだったと思います。